理事長所信
第50代理事長 西山 剛
【スローガン】
~その一歩が未来を拓く~
【はじめに】
見渡せば雄大な立山連峰を仰ぐことができ、振り返れば日本海が澄み渡る。山と海に挟まれる辺り一面に田園風景が拡がり、空気のにおいや虫の音で季節の移ろいを感じることができる。そんな自然豊かな滑川の地で生まれ、家族そして地域の人たちに育まれながら高校卒業までを過ごした後、漠然と都会に憧れを抱き進学を機に20代半ばまで滑川を離れました。都会での生活は思い描いたとおり華やかで、思い起こせばそれなりに充実しそれなりに楽しんではいたように思えますが、なぜかそこでずっと住み暮らしていこうとは思えませんでした。滑川にいる間は、そこにあることが当たり前で特に気に留めていなかったのでしょうが、この滑川の自然環境やそこに育まれた文化、人と人の繋がりが生み出す地域の空気感を再認識し、自分の中にそれが地域の魅力としてしっかりと根付いていることを、離れて生活をしてはっきりと感じとることができました。そんな滑川への愛着を抱えながら学生生活を送っていましたので、社会人として地元に戻るという決断は至って自然の成り行きでした。職業柄、丁稚奉公のような形で経験を積ませて頂くことから始まった社会人生活で、仕事を通じ誰かの助けになることができる喜びを知りました。また、仕事とは別に営利を目的としてではなく、人のため地域のために尽くすことに情熱を注いでいる方々がいること、その方々は活動を通じて固い絆で結ばれていることを知りました。そして、私の目にはそんな方々が社会人として青年経済人として格好良い大人だと映ったことを今でも覚えています。それが私の青年会議所との出会いでした。日々、仕事に勤しむ中でもっと人間として成長したい、格好良い大人になりたいそんな想いから縁あって滑川青年会議所に入会させて頂きました。そこは20代から40歳までの滑川というただ一つの共通項で繋がり、地域と本気で向き合うことを通じて互いが本気で向き合い、情熱を持って真剣に活動に取り組む固い絆で結ばれた組織でした。本気で真正面から向き合うが故に、時に意見や考えの食い違いに直面し、時に厳しい指摘なども伴いますが、それは地域の、そして互いの発展と成長を願う愛情が根底にあるからこそです。
青年会議所では、自分と本気で向き合い、仲間と本気で向き合い、地域と本気で向き合うことで、数多くの学びを得る機会があります。私はメンバーの皆さんと共に、それぞれが与えられた成長の機会を掴み、それぞれの成長を皆で感じ取ることができる1年となるよう、覚悟を持って2023年度の活動に邁進して参ります。
【JAYCEEとしての気概を持とう】
1949年に始まった日本の青年会議所運動は、終戦間もない社会が混沌とした状況の中で「新日本の再建は我々青年の仕事である」という先達の強い使命感と、高い志、熱い情熱から生まれたものです。この崇高な姿勢は日本各地に伝播し、どの時代においても「明るい豊かな社会」を目指し地域の課題と真剣に向き合いながら脈々と受け継がれてきました。この歴史の上に私たちが現在の運動・活動を展開していることを決して忘れることなく、JAYCEEとしての気概を胸にあらゆる課題に立ち向かわなければなりません。JCI Missionには「青年会議所は、青年が社会によりよい変化をもたらすための発展と成長の機会を提供する」とあります。つまり、青年会議所に所属するということは、成長のチャンスが目の前に繰り広げられているということであり、このチャンスを各々が掴み取り成長することは、組織の運動・活動を更に輝かせ、ひいてはそれが地域の発展と明るい未来に繋がっていくという図式が成り立ちます。青年会議所の運動・活動は決して安くない会費を払い、時間を費やして真剣に地域と向き合い、地域のため人のために奉仕することです。そこに営利は発生しませんので、内部的には情熱、志、互いの魅力が組織を繋いでいます。云わば、お金の繋がりともいえる経済活動よりも、遥かに難しいことに挑戦しているのであり、であるからこそ大きな達成感を味わうことができるとともに大きな成長を果たすことができるのです。滑川青年会議所の現状を鑑みますと、ここ数年で経験豊富な先輩方の卒業が続いた上に会員数は減少傾向にあり、メンバーは全体的に経験が浅い上にそれぞれの担いも多くなり事業運営は厳しさを増すばかり、という現実から逃れることはできません。しかし、これは何も滑川青年会議所に限ったことではなく、全国には同じような課題を抱えながらも気概を胸に地域の発展を願って奮闘し続ける同志がたくさんいます。メンバーが少なければその分一人ひとりの関わり合いが濃くなるという強みだってあるはずです。立ち向かわなければならない壁が高いということは、その分大きく成長するチャンスと捉えることだってできる。青年会議所はいつの時代も困難に立ち向かい己を成長させるための修練を積む場です。周りには志を同じくする仲間がたくさんいます。JAYCEEとしての気概を胸に、自らの成長のチャンスを積極果敢に掴みにいきましょう。
【会員拡大】
私たちはここ数年20名前後で運動・活動を展開してきた訳ですが、富山ブロック協議会の中でも最少人数で運営しているLOMとなります。しかしメンバーが少ないからといって運動・活動の質が落ちているかといえば決してそんなことはありません。実際私の青年会議所活動もすべての年度が20名前後でのメンバーで活動したものでしたが、メンバーが少ないことにマイナスの感情を抱くようなことはありませんでした。それは主体的に活動すればそれがそのまま自身の学びと成長に直結するものであると感じることができたからです。しかし視点を少し先に移してみれば、本年度卒業生が4名、次年度1名、次々年度4名であり、この3年間に卒業するメンバーが本年度理事会を構成するメンバーの6割を占めることのみならず、現状のままでは4年後には4名スタートのLOMとなります。もはや現状のまま4年後を迎えることになれば、存続が危ぶまれる状況にあります。この現実から決して目を背けてはならず、会員拡大が急務であることは明白です。まずは、メンバーの皆さんそれぞれがこの現実を認識し、拡大を自分事として捉えて頂きたいと切に願います。
青年会議所に入会した動機は人それぞれかと思います。しかし、活動を続けるうちに「誰かのため、地域のため、未来の子どもたちのため」に考えを巡らすことができるようになっていませんか。そんなことを入会前に考えることができていましたか。少しでもそうすることができるようになっているとすれば、それは皆さんの価値観が変わったということです。運動・活動を通じて自身を成長させることができていることの証です。会員拡大とはこのような価値観を持つ仲間を増やすことに他なりません。そのためにはメンバー一人ひとりが、青年会議所に所属することはどういうことなのか、何をするのか、つまり明るい豊かな地域を創ると掲げる青年会議所のことを情熱的に語ることができるようになり、その情熱を伝播させ続けていく事が必要です。とりあえず入ってみようよ、良いことがあるよ、このような接し方で人の心は動きません。お金と時間を使って誰かのため、地域のために活動をしようとするその力の源泉は、なんといっても情熱です。「青年会議所はどんな団体ですか」の問いにあなたならどう答えますか。
また一方で、入会したにも関わらずその後の活動に目的や理由を見出せず退会されるメンバーがいることも事実です。その原因は、青年会議所の魅力や目的、意義を理解できず自身の糧と感じられていないことにあると思います。言い換えれば活動について、その意義や自身の糧となることを理解させてあげられず退会に至らせてしまったともいえるでしょう。新入会員の数を増やすことが拡大ではなく、活動の意義や自身の学びや成長に繋がることを感じてもらい、私たちと同じモチベーションをもって活動する仲間となって初めて拡大したといえるのです。新しい仲間が入られた際にはメンバー全員で温かく迎え入れ、自身のこと、青年会議所のこと、地域のこと、未来のことを大いに語り合いましょう。それも拡大活動のひとつに違いありません。
我々が住み暮らす地域に青年会議所が存在しなくなってしまうことは、地域にとって大きな損失となってしまいます。事実、地域の政治経済活動やイベント運営など様々な活動の中心には、必ずこの滑川青年会議所を巣立った先輩方が携わっていらっしゃるといっても過言ではありません。青年会議所がこの地域にも存在し地域に本気で向き合う青年を生み続けてきたことはこの事実をもってすれば明白です。地域に本気で向き合い行動することを通じて、我々青年が自己の成長を得られる組織は他にはありません。自身が持つ情熱を信じて、決して諦めることなく会員拡大を継続していきましょう。
【歴史の節目としての50周年】
1974年に滑川の発展を願い、この滑川の地に青年会議所が発足されてから今年で創立50周年を迎えます。現在、私たちが運動・活動を続ける中で学びと成長の機会に恵まれているのは、先輩方が半世紀もの長きに亘り、滑川の発展を願って使命感から行動を起こし、社会からの信頼を得て大切に守ってこられた歴史と伝統という基盤があるからです。40歳という限りある時間をこの滑川青年会議所で精力的に活動なさった偉大な先輩方は、卒業されて今なお政治・経済・社会あらゆる側面から第一線を張り滑川の発展にご尽力し続けられており、また多方面から私たちの活動を見守り支えてくださっています。活動した時代は違えども志を同じくする先輩方がそれぞれの時代にどのように向き合い、考え、何を大切にして運動・活動を展開されてきたのか。その偉大な足跡をしっかり理解・継承し、この記念すべき年を過去から現在、現在から未来への懸け橋となって更なる発展を推し進めていく節目として相応しい年度にしていかなければなりません。
また、50年もの長きに亘り滑川青年会議所が絶え間なく運動・活動を展開してきた実績があるのは、偏に市民の皆様・行政の皆様・地域の諸団体の皆様との協働があってこそです。これまでのお力添えに感謝し、皆様の恩恵を受けながら活動する中で蓄えてきた英知を結集し、更なる滑川の発展と明るい未来の創造に寄与する事業を展開して参ります。
いつの時代も明るい豊かな社会を築くために青年会議所は活動を続けてきましたし、それはこの先も変わることはありません。50年という大きな節目を迎える年に運動・活動を展開することができるのは滑川青年会議所の長い歴史の中でも私たちだけです。この大きな節目を、滑川にとって明るい未来とは何なのか、明るい未来を築くために地域から求められる青年会議所としての在り方とは何なのかを見つめなおす絶好の機会と捉え、メンバー全員の英知と勇気と情熱を結集し、新しい時代の先駆者として滑川の明るい未来への一歩を踏み出しましょう。
【明るく豊かな地域を創るまちづくり、人づくり】
まちづくりとは何でしょうか。一概にまちづくりといっても施設や設備を整えるハード面と人材の育成や意識改革、技術の伝承などのソフト面があります。青年会議所が推し進めなければならないまちづくりは当然ソフト面からのアプローチ、つまり人づくりだと考えます。持続可能な地域社会を創るために、そして地域に住み暮らす人びとに明るく豊かな未来を指し示してあげられるように、我々にできることは人びとの意識改革、まちづくりに対する当事者意識を促すことです。これを実現するためには、まず我々がゆるぎない理念を組織にしっかり浸透させ意識変革者として組織力を再構築することから始める必要があります。行政主体のまちづくりをする時代はとうの昔に終わっています。滑川にとって何がまちづくりの課題であるかということにしっかり向き合い、様々な価値観や個性が調和する地域社会になるために何が必要なのかを突き詰めて考えていきましょう。
また、安心・安全に暮らしていける地域社会もまちづくりには重要な要素となります。昨今地球温暖化の影響を受けてか、かつては想定していなかったような自然災害が頻発するようになりました。地域の諸団体や行政との連携、他地域に張り巡らされた同志とのネットワークを最大限に発揮して、いつ起こるかもわからない、抗うことができない自然災害からまちや人を守ることも、私たち青年の使命であることを胸に留めておいて欲しいと願います。
近年、世界中を席巻した新型コロナウイルス感染症の猛威は、人々の生活様式から価値観までを一変させてしまいました。社会に閉塞的な空気が蔓延し、人びとのコミュニケーションの分断が叫ばれました。人が集まることにリスクが伴うという価値観が一般的になりつつありますが、急速な進歩を遂げたデジタル技術の普及によりその代替手段としてオンライン上で人が集まる術が確立されました。当然その恩恵を受けて離れた場所にいる人とも簡単にコミュニケーションを図れるようになりましたが、反面、当たり前にあった膝と膝を突き合わせるようなコミュニケーションが希薄になったようにも思えます。私はこの価値観を当たり前として子どもたちが育つことに危機感を覚えます。相手の表情やちょっとした仕草から気持ちを察するチカラは、相手への思いやりを育みます。これは対面でのコミュニケーションから身に付けるものであり、また社会では必須の能力として求められているチカラです。当たり前に存在するものが失われることで、その大切さに改めて気付かされるということは、人間の真情だと思います。
地域の主役である人びとが、そして地域の宝である子どもたちが、夢と希望をもって歩んでいける未来の創造に果敢に挑戦していきましょう。
【固い絆で結ばれた組織に】
長い歴史を紡いできた滑川青年会議所は、時代の変化と共に持続可能な組織への進化が求められています。いつの時代も青年会議所はその運営のすべてを自分たちで担うことで、組織の中での個の在り方、個の集合体としての組織の在り方を学んできました。組織を運営する中で一番大切なことは全員が当事者意識を持つことではないではないでしょうか。メンバー数が減少傾向にある現在、自分の役割だけを全うするだけでは立ち行かなくなってきた部分があることも事実です。組織内で起こることを自分事として受け止め、仲間が活躍する場には全員で駆け付ける。苦しんでいる仲間がいれば全力でサポートに駆け付ける。仲間の成功や喜びを全力で共有する。そのような組織風土を育めるか否かは、メンバー数の多寡に依存するものではありません。それぞれ異なるバックボーンがあり、年齢も性別も違う仲間が、地域の発展と個々の成長を願って相集う組織です。互いがその尊い存在に敬意を払い、常に自分の行動を見つめ直す謙虚な姿勢で接することは、必ず個の成長に直結するものであり、それは組織を成長させ絆を生み出すことでしょう。先輩方が築き紡いでこられた滑川青年会議所の伝統をしっかり継承しつつ、青年会議所という枠組みの中で、その枠組みに囚われすぎる事なく、持続可能な組織への進化を探求し続けていきましょう。
また行動の範囲をLOM内に留めてしまうことは、貴重な成長のチャンスを自ら放棄することであり、これはメンバー自身にとってはもちろんのこと、LOMにとっても損失に他なりません。LOM外での成長のチャンスも能動的に掴みにいくことは、自身の視野を拡げ新たな価値観をもたらす大きな可能性を秘めています。メンバーに余すことなく発展と成長の機会が提供されるよう支援することは、必ず強固な組織に進化することの下支えになります。また、LOMとして他LOMと連携しひとつの目標を協働で成し遂げることは、組織として非常に大きな財産であり、組織と組織の絆を深める貴重な経験になります。他LOMの雰囲気を垣間見たり、独自の価値観に触れたりすることで新しい発見があり、組織の成長に大きなヒントを与えてくれるはずです。
私たちの運動・活動のその先にある、地域の人びとの明るい未来を見据え、真っ直ぐひたむきに成長を追い求める仲間を全身全霊で支えていきましょう。
【結びに】
「青年会議所しかない時代から、青年会議所もある時代になった」こんな言葉を耳にすることが少なからずありませんか。多様な価値観が尊重される社会になった現代には、本当に多種多様な団体があります。青年会議所は「輝く個性が調和し、持続可能な地域を創ることで、明るく豊かな社会を築く」という崇高な理念を掲げ、地域社会の課題と向き合い続けてその歴史を紡いできました。ここに相集うメンバーを繋ぐのは、地域を良くしたい、明るい未来を子どもたちに届けたい、という情熱ただそれだけです。
人脈を作りたい、仕事を軌道に乗せたい、自己研鑽したい。入会の動機は人それぞれあり、目的はなんでもいいと思っています。ただ、目的を持って入会したからには青年会議所を通じて自分が想い描いたことを本気で叶えてください。本気で人脈を作るには、本気で仕事を軌道に乗せるためには、本気で自己研鑽するには、一体何が必要なのかを本気で考えてください。青年会議所は利害関係で集う団体ではなく、情熱を持った想いの結集が人を突き動かす団体です。地域の発展を願う想いを形にするべく展開する運動・活動は、必ず人との関わり合いの中で成し遂げられるものです。地域の方々や多くの仲間を巻き込んでひとつのことを成し遂げるという経験からは青年経済人として、延いては人としての在り方を学ぶことができます。そのような関わり合いの中からは一生付き合うことのできる仲間との絆を育むこともできるでしょう。また、青年会議所でしか巡り合うことができないような貴重な場面で緊張感やプレッシャーを感じながらも自身の担いを果たすことは、その後の人生の大きな糧となるでしょう。青年会議所は地域のために情熱を燃やす青年にとっては、常に厳しさの中にも愛情を持って学びと成長の機会を提供してくれる人生最後の学び舎となります。私はこのような団体は、いつの時代にも青年会議所しかないと信じています。
超えられるかわからない大きな困難が目の前に立ちはだかった時は、成長しなければいけない運命的なタイミングです。仲間と共に英知を結集して立ち向かっていきましょう。
自分の能力を超える挑戦をするとき、恐れの感情に囚われることがあります。勇気を持って踏み出したその尊い一歩は、例え失敗に繋がったとしても、それは決して失敗ではなく、次の成功への近道となり自身と仲間の大きな財産となります。勇気を持って一歩前に踏み出しましょう。自身を突き動かす地域を想う情熱は、より良い未来を導く仲間と地域のエネルギーの源泉になります。今よりも更に明るい豊かな滑川の実現に向かって、私たちの英知と勇気と情熱を結集させ、足並みを揃えて共に歩んでいきましょう。
【基本方針】
・発展と成長の機会に繋がる会員研修の実施
・地域に賑わいをもたらす事業への参画、実施
・豊かな心を育む青少年育成事業、例会の実施
・歴史と伝統に感謝し、新しい時代への一歩となる周年式典・祝賀会の開催
・他LOMと交流を深め、学びを得る合同事業、例会の実施
・LOM以外の学びの機会への積極的な協働参加
・意義と重要性を認識し当事者意識を持って全員で取り組む会員拡大
・その他理事長所信に基づいて行う事業例会の実施

